こんにちは、代表の数藤です。
最近シニア起業が増えています。世界の経営学者が実施する「グローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM)調査」によると、日本のシニア(55~64歳)起業家は約63万人(2015年時点)で、10年前の約37万人から約7割増加しています。※1
起業に興味をもったきっかけは「周囲にすすめられた」「勤務先ではやりたいことができなかった」というのが一番多く、第二の人生でとして定年後にずっとやりたかったことにチャレンジする起業家さんが多いです。※2 中には社会貢献や地域のつながりを持つ為や、趣味の延長を目的とした人もいますが、定年前に早期退職をして今迄以上に稼ぐことを目標にしている人も多くいらっしゃいます。
しかし、創業塾や周りの人が言う通り起業は簡単ではなく、10年後に数パーセントの企業しか生き残らないという数字の通り起業は生き残りの難しい世界です。
数十年もビジネスの最前線で揉まれ、経験も豊かな人達がどうして起業でうまくいかないのでしょうか。中小企業白書(中小企業庁発行)によると、起業後直後の課題の1位はいつの時代も決まって1位『資金不足』、2位『人材不足』、3位『顧客不足』です。確かに資金があれば何でもできる気がします。けれど、お金があれば何でもうまくいく訳ではありません。人を雇ったからといって成功するわけではありません。顧客あるからと言って事業が続くとは限りません。
起業直後の最大の課題は、今まで当たり前のようにあった事が無くなる(無くなった)事です。これらは起業スクールでは教えてくれないようです。『資金不足』『人材不足』『顧客不足』などと、なんとなくわかりきっている事しか教えてくれません。無くなる事を教えてしまうと、リアルすぎて起業する人が減ってしまうからでしょうか?
起業してから『無い』と気づく事
1.顧客
2.ブランド
3.言う事を聞いてくれた部下
4.横の組織
5.ルールやマニュアル
1の『顧客』が全てなのですが、顧客を得る事の難しさを実感します。
皆さんは以下の3つでどれが正しいと思いますか?
「お店を出せば客が来る」
「料理やサービスが良ければ客が来る」
「ホームページを出せば客が来る」
実は、どれも不正解です。この3つを正しいと思われている方はもう一度起業を考えなおした方がいいです。
「お店を出しただけでは客はこない」
「料理やサービスだけでは客はこない」
「ホームページは誰も見ない」
こう思った方がいいです。これが現実です。
先ほどの起業直後の課題では顧客不足』が3位でしたが、顧客が沢山いれば資金が潤沢に回り、人も集まり、良い循環になります。資金があっても顧客不足や人材不足は解消しません(無限にお金があれば少しは解消します)。余談ですが、とある創業スクールで、「起業して大事なのは『経費を削減すること』『売上を上げること』どちらですか?」との問いに『売上を上げること』と答えたのは参加者の40%位でした。売上が無いと企業は存続しません。売上が沢山あれば経費を削減する必要はありません。
2のブランドというのは、社名やサービスのブランドです。どんなにオシャレで気の利いた名前を付けても、ブランドが無ければ役に立ちません。起業して考え抜いた名刺を見せても「すごいですね」で終わってしまいます。特に今まで大手企業に努めていた人は名刺を見せただけで信頼や仕事をもらえたのに、自社の名刺は誰も相手にしてくれなくなります。無理やり自分を大きく見せようと思っても逆効果。かえって怪しまれます。(実際に起業家を餌食にしている怪しい方もいますので。。)このように、名刺交換をするとブランドのありがたさに実感するのです。
3と4は人材です。今まで何も言わなくても仕事をしてくれた部下がいなくなります。当然、ブランドもお金も無い企業に優秀な人材が集まるのは稀です。『横の組織』というのは、経理・総務・営業・広報・ITなどの部門のことです。これらの作業を全部自分で行わないとなりません。名刺ひとつ作るにもメールアカウントを作るにも帳簿をつけるにも全部自分で行う覚悟が必要です。
最後のルールやマニュアルともあまり知られていない気がします。人を雇って「ようし、これで楽になるぞ!」と思ったら大間違い。今迄当たり前と思っていたルールや常識は通用しません。仕事が余計に増えた気になります。企業の考え方や仕事の進め方など一から指導しないとなりません。人が辞めてしまうと一から教育のやり直しです。この繰り返しで人を雇うのが嫌になる企業も多いです。いかに前職の人事教育が素晴らしかったかのありがたみを感じる事になります。
いかがでしょうか?意外と語られていない「起業してから『無い』と気づく事」をお伝えしました。起業スクールでこれらの解決方法を教えていたら何年もかかると思います。やはり、起業してからでも学ぶことが大事なんだなと思います。私たちは、人とのつながりと学ぶことを目的に活動しています。そして、いつか、これらの事実と対処(考え方)を伝えていけたら良いと思います。
脚注
※1シニア起業家増加 – ニッセイアセットマネジメント
※22017年版中小企業白書 概要 – 中小企業庁
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